昨年（2022年）新生病院は創立90周年を迎えました。礼拝堂の隣の敷地には「賢者たちの森」が整備され、歴史案内板をめぐることを通じて、ここ小布施の地に生きたたくさんの方々の人生を知ることが出来ます。新生病院初代院長R.K.スタート博士は、それらの人々の要（かなめ）のような存在として、結核に悩む患者さん達のために人生をささげ、新生病院の医療・看護・介護・福祉の礎（いしずえ）を築かれました。1977年にスタート博士が逝去されてから、今年で45年となります。本日も博士の人生を思い起こし、また聖書のみ言葉に思いをめぐらして、この祈りの時をすごしてまいりたいと思います。

今日は『新生病院グループ90年の歩み』29ページに掲載された一つのエピソードをご紹介します。今売店やリハビリ室の隣に設置されているスタート博士の肖像画についてです。この画はカナダでスタート博士に命を助けてもらった、チボウ・ナイラシさんによる作品です。冬の町で結核を発病し、病院に搬送された亡命ハンガリー人のチボウさんを、スタート博士は温かく迎え、治療するだけでなく、家族のように世話をし、画家としての人生を送ることが出来るまで、支えました。肖像画はその博士の人生を記念して病院にささげられました。

この肖像画は、普段あまり目立ちません。ですがそれこそが、スタート博士の望まれたことであったのではないかと私は思います。自己を主張しすぎることなく周囲の環境や人々に調和し、謙虚に、神様の恵みと隣人への愛を生き方であらわした人。それこそがスタート博士でした。

本日読みました聖書には、「憐れみ深い人」や「心の清い人」、「平和を実現する人」は幸いであるとされています（新約聖書「マタイによる福音書」5章7～9節）。スタート博士もまた、このキリストの言葉を心に刻み、「憐れみや清い心をもって、平和を実現する人になりたい」と感じたことと思います。そして「日本の結核患者さんのために」という大きな志をもち、それを一つ一つの小さな出会いや出来事の中に実現していったのであろうと、私は思います。私たちもまた、キリストのこれらの言葉に力をうけて、日々の働きを続けていきたい。そのように願っています。